出産を機に1ヶ月仕事を休んで育児参加。男性目線で見た育休の本音は「育“休”じゃない」
澤村 正樹 ヒューマンリソース本部人材企画部テクノロジーグループ グループマネージャー 2012年に株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)に中途入社。ゲームプラットフォームのエンジニア、エンジニアリングマネジャー等を経て、2017年よりヒューマンリソース本部に異動しHRビジネスパートーナーを担当。現在は人材データを扱うツール開発・分析に従事している。趣味は映画と料理とJリーグ観戦。得意なメニューはパエリアもどき。
――一昨年に育休を取られたそうですが、業務を離れて育休を取ろうと思ったきっかけを教えてください。
澤村: はい、一昨年の秋に子どもが生まれた直後から約1ヶ月間、育休を取りました。二人とも実家にあまり頼れる状況でもなかったので、出産後最初の1ヶ月は自分のサポートがないと厳しいだろうと思ったのが一番の理由ですね。妻の反応も「ぜひ!」という感じだったので、思い切って休むことにしました。
多少なりともチームに負担をかけるだろうと思ったので、わりと早めに計画を立てて、生まれる半年ほど前には「1ヶ月育休を取りたい」とメンバーには伝えていましたね。
――当時どのようなお仕事をされていたのですか?業務の調整は大変でしたか?
澤村: 今はヒューマンリソース本部の中で人事データの分析やツール構築を主に担当しているのですが、当時はHRBP(事業部人事)を担当していました。
チームメンバーは育休を取りたいという僕の申し出に賛成して背中を押してくれたのですが、業務の幅が広かったこともあり、引き継いでくれたメンバーは正直かなり大変だったと思います。不在中になるべく迷惑をかけないよう、引き継ぎシートを作成し、不確定要素も含めて状況を細かく記載して共有するなど工夫しました。
――育休中はどのような生活をしていたのですか?
澤村: まず3食作っていました。他にも、できる限り家事はやっていたつもりです。妻が満足するほどのクオリティだったかどうかはわかりませんが(笑)。あと、完全母乳で育てていたので、妻にまとまって寝てもらえるよう、時々は冷凍した母乳を哺乳瓶で飲ませたりもしていました。
子どもが外に出られないので妻も自分もほとんど家にいて、外出するのは1日1回スーパーマーケットに行くくらいでしたね。とにかく1日があっという間に過ぎていく。寝かせたと思ったらすぐ授乳で起きて、飲ませて寝かせると、またすぐ起きて。気付いたら1ヶ月経っていました。
そもそも育休っていうけど、”休”じゃないですよね。会社は休んでいるかもしれないけど、昼夜の区別なく一日中家事育児をしていて、休む暇なんてまったくなかった。「育休」という名前はやめた方がいいんじゃないですかね(笑)。立派な労働ですよ。
――夫の全面的なサポートがあって、奥様も心強かったでしょうね。
澤村: 出産後の怒涛の1ヶ月を夫婦2人で協力しながら乗り切ったのは、お互いにとって良い経験になりました。妻もとても喜んでくれて、育休を取って本当に良かったです。
僕が家事育児を半分担ったという部分もありますが、一番は精神的な部分のサポートが大きかったと思いますね。彼女にとって初めての出産だったので何が起こるかわからなかったり、授乳が上手くいかなかったりするストレスがありますから。自分もそれを目の当たりにして、話し相手がいることって大事だなと思いました。
そして自分にとっても、社会人になって1ヶ月も仕事から離れたことは一度もなかったので、「人生のターニングポイント」というか、今後のキャリアを見直すきっかけになった気がします。
――現在は育児やプライベートと仕事の両立はどうされていますか?
澤村: 息子の保育園の送りは僕が担当しているので、毎朝息子と一緒に家を出ています。お迎えは妻の担当ですが、僕自身も子どもが生まれる前より早く帰宅するようになりました。
また、飲み会に行く頻度も減らしました。自分が夜いないということは、寝かしつけや急な事態に妻一人で備えなくてはいけないので大変だろうなと。
毎日会社を出る時間を決めて仕事に取り掛かっていますが、そのためには会議までの15分を有意義に使って雑務を終わらせたり、前倒しで業務をこなしたりと、集中していない時間をいかに減らすかが勝負です。時短勤務の大変さが初めてわかりました。
また、子どもが体調を崩して保育園に登園できない日に妻も僕も会社を休むことがどうしても難しい場合は、会社が提携している病児シッター「フローレンス」にお世話になっています。専任スタッフの方が子どもの体調を細かく管理して状況を報告してくれるので、本当に安心感があって助かっています。会社の補助のお陰で1時間800円で利用できるのでとてもありがたいですね。
――夫婦間のスケジュールはどのように把握されているのですか?
澤村: 会食や病院の予定など夫婦間のスケジュール把握には、共有カレンダーアプリを使っています。
あと、スマートスピーカーも面白いですよ。botが仕掛けてあって、「OKグーグル うんち」っていうとうんちの時間を記録してくれます。それがLINEに通知されるので、家にいない時もうんちした時間が分かります(笑)。
――DeNA社内で育休を取る男性が増えているそうですね。
澤村: そうなんです。ここ1-2年ですごく増えていて、特に今年に入ってからは毎月1-2人から申請が来ているようです。
育休は女性だけが取るものだというイメージ自体、もう古いのかもしれませんね。僕も応援してもらったし、もし同僚が「ライフイベントをきっかけに働き方を変えたい」と言ってきたら背中を押してあげたいと思っています。DeNA全体にそういう土壌ができているので、全社的に今後はもっと働き方が多様化していくんだろうと思いますね。
他社の人と話していると、制度はあれど使いづらいという会社がまだまだ多いと感じます。僕が育休を1ヶ月取った話をすると、大抵驚かれます。
――ライフイベントというと育児に注目しがちですが、介護や看護などは性別や年齢に関係なく誰にでも起こり得ますもんね。
澤村: 最近特に介護の相談は増えている気がしますし、社員の年齢があがっていくにつれて今後もっと増えていくでしょう。育児はある程度ゴールが見えますが、介護はいつまでやるのか期間も見えないし、どこまでやるのかも難しい分、悩みますよね。育児よりも人に相談しづらいでしょうし。
他にも、お子さんが病気になってしまったとか、配偶者が大きな怪我をしてしまったとか、自分自身の持病が悪化してしまったとか、様々な事情によって働き方を変えたいと思っているのだがどうしたら良いか、というような相談をもらうこともあります。
人生のどんな局面においても働くことを諦めることなく、ライフイベントと仕事をうまく両立していけると良いですよね。
――育休を取った男性社員として、そしてDeNAの人事として、DeNAをどんな会社にしていきたいですか?
澤村: (創業者の)南場さんが中途入社者向けのオリエンテーションで毎回こんな話をしているんです。「長い人生色々なことがあるけど、何かあった時に働き続けることを諦めたり、逆にライフイベントを犠牲にしたりして欲しくない。皆には、ライフイベントと仕事を上手く両立しながら、DeNAで長く働いてほしい。それができる会社でありたい。」と。
本当にそうだな、と心から思うんですよね。自分が育休を取ったということもありますが、人事として沢山の社員と話してきて、皆それぞれ色々な事情を抱えながら働いていることを知っているので。
そのためには、これから世の中の流れや社員のライフステージが変わっていく中で、会社ができることをフレキシブルに考えて実行し続けることが大事だと思っています。すべての社員がライフイベントと仕事を上手く両立できて、仕事をしているときは楽しくいきいき輝いている、そんな会社にしていきたいですね。