ライフステージは誰でも変わる。その時に備えて普段からチームで大事にしていること
中:三ヶ野 吾郎 経営企画本部法務・コーポレート統括部法務部 部長 ソニー株式会社の法務・コンプライアンス部門を経て2009年に株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)入社。同社法務部にて、海外事業、自動運転領域を含むオートモーティブ事業、EC事業等の法務グループのマネージャーを経て、2017年7月より現職。会社公認部活/育児部の部長を兼務。趣味は、ピアノ(主にJAZZやFFやドラクエ、ロマサガなどのゲーム音楽)と毎週1週間分の作り置き料理、子供のキャラ弁作り。2児の父。 左:細野 俊昭 経営企画本部法務・コーポレート統括部法務部第一グループ グループマネージャー 不動産系上場会社の法務部を経て2009年にDeNA入社。入社直後に担当した『怪盗ロワイヤル』から『ポケモンマスターズ』まで、これまでリリースされたほぼ全てのゲーム案件に関わる。最近はeスポーツ事業の立ち上げもサポート中。その他、AI関連、ソーシャルライブ、マンガボックスやエブリスタ等のエンタメ系事業全般のサポートをリード。一番のリラックスタイムは2歳の息子と遊ぶ時間。1児の父。 右:小船戸 瑞枝 経営企画本部法務・コーポレート統括部法務部第一グループ インターネット広告代理店の法務部を経て2008年にDeNAに入社。主にEC、ゲームエンターテイメント関連の事業、SHOWROOM、その他広告全般の法務業務を担当。趣味はALFEEと漫画を読むこと。3児の母。
――皆さんは同じ法務部でもう10年近くの付き合いだとか。
三ヶ野: そうですね、3人ともほぼ同時期に中途で入社しました。法務部は中途採用の経験者が多く他の部署と比べて平均年齢が少し高いこともあって、入社してわりとすぐに結婚・出産・育児などのライフイベントが起こる人が多かったんです。そこで、そのようなライフイベントが生じてもバリューを発揮し続けられる環境を整えるべく、できることから主体的に動いてきました。
小船戸: 私は入社して間もなく結婚し、翌年に産休を取得して出産。その後も2回出産し、気付けば3児の母です。
三ヶ野: 当時は会社全体の働き方が今とはだいぶ違っていましたね。会社のフェーズ的にも、ハードワークが必要な時期でした。なので、周りが遅くまで働いている中、プライベートを理由に帰るとは言いづらい雰囲気が正直あった気がします。
そんなときに開催されたマネージャー合宿で、仕事とプライベートの両立についてどう思っているかということを社長他取締役層にマネージャー全員の前で、直接聞いたことがありました。回答は「家族のために早く帰ること、全然問題ないと思うよ」ーー正直目からウロコでした。それをきっかけに、自分の部署でも本格的に、今の言葉で言うと「働き方改革」を始めました。
細野: 私には当時まだ子どもがいなかったので、たとえば子どもの送り迎えで遅く出社したり早く退社したりすることにあまりピンと来ていなかったんです。正直「早く帰れていいなぁ」と思っていたくらい。
全然悪気はなくて、育児を経験していないのでお子さんがいる人がどういう日常を送っているのか想像すらできていなかっただけなのですが、三ヶ野さんが部内で働き方改革を始めてくれたおかげもあり、小船戸さんのようなお子さんがいる時短社員の方たちの状況を理解できるようになった気がします。
――その後、パパママが集う「育児部」を立ち上げたそうですね。
三ヶ野: はい。当時、福利厚生の一環として会社公認の部活動が始まりました。事務局からは「軽音楽部」を立ち上げてほしいと言われたのですが、育児中に軽音楽部とか「無理ゲー」なので(笑)、仕事以外にも真剣に取り組んでいること(育児)について、自部署のメンバー以外にも仲間がほしいと思い、部署の枠を超えて育児について自由に話せる場として「育児部」という部活を立ち上げました。
当時の環境からすると、仕事命で、育児や家事より優先してなんぼでしょ、という雰囲気がありましたから、あまり人が集まらないかなぁと思っていたのですが、意外にもたくさんのプレパパやプレママ、新米パパママやベテランパパママが集まってくれて。話していると皆同じようなことを思ったり悩んだりしていることがわかって、「皆同じ事で悩んでいるんだな、自分だけではないんだな!」と、何だか荷が下りたような、ふっと身体が軽くなるような実感がありました。
まずは定期的にランチの場を設けて、ただお喋りをするところから始めました。人間関係ができてからは、ランチだけでなくメールやSlackでいろいろな話をしたり、時には週末に家族同士で遊んだりと、活動の場が広がっていきました。
ランチやSlackの話題は、子どもの習い事や保育園の選び方、時短に役立つ家電情報、PTAでの振舞い方、お金の貯め方、保険など、本当に多種多様です。立場や境遇が似ている人達からナマの情報が聞けるので、WEBで調べるよりもよっぽど有益な情報を沢山得ることができます。
――法務部のどのようなカルチャーが働きやすいと感じますか?
小船戸: 些細なことかもしれませんが、結婚しますと言ったら「おめでとう!」、育休に入りますと言ったら「おめでとう!」と、ライフイベントをお祝いしてもらえる雰囲気が好きです。普段から「お子さん保育園に慣れた?」とか「子どもに手足口病が流行っているね」とか、プライベートの話題が自然と溢れるカルチャーですね。
私自身は、二人目の妊娠がわかったときに一人目の産休復帰から一年しか経っておらず、初めての時短勤務で思ったように成果を出せていない状況だったので、正直心苦しかったんです。そんな時、上長からの第一声が「おめでとう!」で、復帰後に向けたポジティブな話もしてくれて、本当に嬉しかったです。実際に復帰した後も、温かく迎え入れてもらいました。
三ヶ野: この人素敵だなっていう人って、仕事だけでなくプライベートも充実させている人が多いと思うんです。今後は育児だけでなく介護のニーズも出てくるだろうし、自分が病気になってしまうこともあるでしょう。そういう不測の事態になっても、働くことを諦めない組織でありたいと思っています。
当たり前と言えば当たり前ですが、人生ってライフイベントに応じて状況が変わります。仕事目線で考えると、必ず出せるアウトプットの量にはアップダウンがあるじゃないですか。その時、その時に出せるバリューを最大限に出すというのはもちろんYESだと思いますが、「ダウン」のときまで「アップ」の時の最大の付加価値を出し続けるのは難しい、というか不可能だと思うんです。誰かが「ダウン」の時は、組織の皆で協力して助け合えるような風土にしたいですね。
もちろんこれは、普段から個々人がプロフェッショナルとして一所懸命に仕事に向き合っているという前提があるからこそ成り立つ話ですが。
小船戸: そういうことを日頃から口に出してくれるので、「ダウン」の時も相談しやすいですし、普段からもっと頑張ろう!って思えます。
――不測の事態に備えたアサインや引き継ぎの仕方などで工夫していることはありますか?
細野: 普段からのコミュニケーションが一番大事だと思っています。雑談ももちろんですが、1on1などで各メンバーの状況を常に適切に把握しておくことで、何かあった時にすぐ動けるようにしています。
仮に何らかの事情である法務担当者の対応が難しくなった場合、まずは本人がどれくらい動けるのか、あるいは動けないのかについて、正直ベースで話を聞きます。「無理して頑張ります」ではなく、どこまで出来てどこから出来ないのかを冷静に見極めることがその後を合理的に判断するうえで大事だと考えているためです。無理した結果、周りに迷惑をかける事態になってしまったら、会社にとっても本人にとってもまったく幸せではないですから。
三ヶ野: 普段からメンバー間で情報を共有し合うことによって、育児だけでなく仕事もワンオペにしないことが大事ですね。
細野: 同感です。一時期、退職等の諸事情でゲーム事業のサポートをほぼ私一人で行っていた経験があり、その時は「今もし自分が倒れたら結構ヤバいな……」という状況で精神的にもきつかったですし、実際、会社の適切なリスクコントロールの観点からも危なかったので、ワンオペにしないことの重要性は私自身が痛感しています。
担当者個人が一定の品質・スピードで安定してパフォーマンスを発揮するためにも、また会社の適切なリスクコントロールを行うためにもワンオペにしないことが重要で、そのためには、意識面と仕組み面の両方からのアプローチが必要だと思います。
意識面については、まずはマネージャーの自分が普段から率先して「透明性」の大切さを口に出しつつ、実際にグループメンバーに様々な情報共有やコミュニケーションを行うことで、「透明性」の意識と実践を浸透させるようにしています。ちなみに「透明性」というのは、「チームで成果を上げるために、正直でオープンなコミュニケーションを心がける」という「DeNA Quality」の一つとして掲げられている項目のことです。
仕組み面については、担当者個人の状況シェアを目的とした部署・グループ等でのMTGを定期的に実施するだけでなく、案件の担当者をできるだけ(一人ではなく)複数人体制にすることでリスクヘッジをしています。ただ、当然、効率性とのトレードオフにもなりうるので、割り振りの際には、この点も考えながらマネジメントを行っています。
三ヶ野: 情報共有やダブル体制って、一見効率が悪そうに見えますが長い目でトータルに考えるとそっちのほうが効率が良かったりしますよね。
ライフイベントと仕事の両立やワークシェアリングという観点からも、これからの時代は男女関係なくどのメンバーも短時間で仕事をしうるという前提で組織を作っていかないといけないと感じています。
細野: その点も同感です。特に自分に子どもができてから、効率良く働くことの重要性を感じるようになりました。三ヶ野さんはやるべき仕事をチャッとやってサッと帰る。上長や育児部部長がそういう働き方を率先して体現してくれているので、後に続きやすいです。
法務部がさらに効率良く仕事を行って組織としても一層強くなっていくことが、会社全体の適切なリスクコントロールや、何より会社や事業の成功にも繋がっていくと考えているので、引き続き働きやすい法務部にしていきたいと思っています。
――小船戸さんは、数回の産休育休を経て、働き方は変わりましたか?
小船戸: 昔に比べて今のほうが圧倒的に生産性が高いと思います。時間に余裕があるとどうしても途中でダラけてしまうことがあるのですが、保育園のお迎えのために退社時間が決まっているため、いかに短時間で効率良く仕事をこなすか、ということを常に意識しながら仕事をしています。
三ヶ野: 「お先に失礼します」と帰る人に対して、皆「お疲れさまです」と言うじゃないですか。でもお子さんがいる方って実際には「お疲れさま」ではなく、帰ってからまたやることが山積みなんですよね。朝が第1戦、仕事が第2戦だとすると、家に帰ってからは第3戦、というイメージです。なので、私は「お疲れさまです」ではなく「頑張ってください」と返しています(笑)。
小船戸: はい、まさにそんな感じで日々戦っています(笑)。日中は仕事を片付ける段取りを考え、帰宅したらその延長線で家事育児を片付ける段取りを組む、そんな毎日です。
――働き方は今後より多様化していくと思いますが、皆さんは何を大切にしていきたいですか?
小船戸: 働き方のニーズは時代によって移り変わっていくと思うので、その変化について行きたいですね。
三ヶ野: 「イクメン」とか「育ボス」とか、そういう言葉ってもう必要ないと思うんです。働き方というか生き方が多様化している中で、働く時間や場所云々ではなく、大切なのは「どういうバリューを出せるか」だけだと思うんです。このような考え方を常に意識していたいですね。
細野: 育児や家事と同じで、仕事も時短できるものは時短していくことが大事かなと思います。例えば、今後はAI等の技術もますます進歩していくことが予想されますので、オペレーションもできるところからどんどん自動化していく。そうすることで、将来的には、機械に任せられることは機械に任せて、人間は人間の方が付加価値を出せる業務に集中することも可能になってくると思います。
DeNA法務部全体として、最新技術等も上手く取り入れながら、これまで以上の品質・スピードで安定してパフォーマンスを発揮できるようにしていきたいと思います。